真空管ラジオレストア記録

実際に手掛けたラジオレストアの記録簿です。

ナショナルDH-730のレストア

№001

 

 横幅が70cm近いような「大型ラジオ」のレストアは久しぶりです。

恐らく昭和34年(1959年)頃のラジオでしょう。

(この年にはDHシリーズの何機種もが生産されていました。)

 

筐体の下は木製の横長の脚ではなく、コタツの脚のように金属製の脚受けがあり、

かなりガッシリとした独立した4本の脚で立っていたのでしょうか?

テレビや後に誕生する「ステレオ」が正にそのような形式でした。

今回それは取り外し、大きな「ゴム足」をネジ止めして取り付けてあります。

 

【届いたばかりのシャーシ内の様子】

まるで「吸引力」でも有ったかのように、綿ゴミやら細かな粒子のホコリがたくさん

積もっています。

当時は最新式だったのでしょうが、耐圧不良を起こし使えない「各種コンデンサ

の姿が多く見えます。(ペーパーコンデンサ、オイルコンデンサ電解コンデンサ

またナショナル特有の「電線同士の癒着、劣化」が有りました。

レストアした人なら「あるある!」と賛同していただけると思いますが・・・

●ゴキブリの卵の抜け殻  ●蜘蛛の乾いた死体 ●カメムシの越冬?

幸いこのラジオには全く上の「住人?」はいませんでした(^^)

 

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見ての通り、中身は「スッカスカ」です。【音の響き優先設計】です!

もちろん何か奪い取られているのではありません(^o^)

まずはデザインとして操作部は極力片側に寄せる設計をし、こんなに広いスペースが

あるにも関わらず、あえてシャーシを縦に配置したようです。

有り難いのはダイヤル機構もマジックアイもすべて一体化されているので、スピーカー

線を切るだけでスッポリと取り外すことが出来、調整時にも作業が楽なのです🎵

全体の構造がシンプルで、全面の木製部もすべてバラバラになります。

スピーカーは磁化しないようにテスターではなく、配線チェック用に自作した「ブザー

チェッカー」で導通試験をしましたら・・・両方共生きていました(^_^)v

 

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さて、困ったことが一つ。

落札時の写真では、ツマミが全て付いているのですが届いた梱包内のどこにも2個しか

見つかりません。出品者のコメントもなかったので、もしかしたら他のラジオの欠品を

補うために2個取られてしまったのかも知れません。

そこで、「差込型ツマミ」方式にはもう「見切りをつけて」、現在市販されていて品種

もたくさんある「軸へのネジ止め式ツマミ」を採用することに決めました!

 

 決定に至った理由は、もう古いタイプのツマミの新品は入手不可能なこと、それに

加えて、このラジオの使用部品の「軸長」が短いため、延長金具をどうしても使わない

と新しいツマミは使えないのです。

延長金具は元々の部品の軸を加工すること無く、ネジで締め付ければオーケーなので

あとはパネルから外に「新しい丸い軸」だけを制作し、はめれば良いのです。

この写真がその状態です。(長さを算出するのが大変でした💦)

元々の部品の「ローレット溝」が見えますね!

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私の場合レストアするラジオの「ブロックコンデンサー」は、たとえ現状で【活きて】

いるとしても、取り外して廃棄しています。

殆どのブロックコンデンサー内には、4〜5種類ほどの電解コンデンサーが内蔵して

おり、その内のどれかがパンクしたり不良になっても、その部分だけを交換することは

不可能です。また当時の製品には「爆発防止用弁」が付いておらず、最悪「大音量」の

爆発音を響かせ、中の油が飛散し大変なことになります。 レストアされる方の中には

古いブロックコンをそのまま残し、そこに新しい個別コンデンサーを並列に繋いで補う

方式をされておられる方もいらっしゃいますが、内部のコンデンサーの「リーク測定」

をする装置も技術も無いので(^_^;) 思い切って「外に平滑回路を作る」事にしました。

これならコンデンサーの入手も抵抗の入手も簡単ですし、追加も簡単です。

私は「基板」に乗っけて、より分かりやすく、電源真空管の近くに配置することも楽に

出来ます。

シッカリとしたL金具でシャーシに固定し、空間にあることで熱がこもる事によるコン

デンサーの劣化も予防できます(^_^)v

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このラジオを通して初めて見たマジックアイです。

【6DA5】という型番です。見慣れたマジックアイパターン表示とは一味違います。

有り難いことに活きていました!(^_^)v

ただし固定していたプラ部分が劣化し、入手した時点で「ぷらぷら」していましたので

無理な力が加わらないような方式で、固定しています。

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それから・・・高性能な真空管【6BQ5】はとても熱くなるんです!

専門家の方からは「真空管は十分に耐えられるように作られているので、何も冷却する

必要はないんだよ!」と言われましたが・・・・当時の設計思想では、車で言えば

「馬力」や「最高速」を売りにしてCMを行った自動車のように、当時の不安定な電源

事情において、いかにパワーや感度を引き出せるかが競われたそうですので、結果と

して発熱の量が半端なく、そこまで頑張って鳴らさなくてもいいんじゃない?って

思うほど熱くなるのです。

オーディオに詳しい方は「熱を逃がすことで音が安定し滑らかになる」という方も

存在し、決して安くはないのですが「真空管冷却ネット」生るものも有りました。

半導体を中心に扱ってきたワタシ的には「熱は敵」という感覚があり、どうしても

放熱したい気持ちがあるんです。

じつは放熱だけでなく輸送中の「真空管抜け」防止にも有効なんです。

真空管全部ではなく「電源管」と「最終段アンプ管」のみです。背の高い真空管です。

放熱器の端はシャーシにネジ止めしています。

雑音発生防止にも役立っているかも。

写真中のネジ止め黒マットは電源感電防止用絶縁ゴムです。(調整中感電しない為)

 

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最初の方のシャーシの写真とはかなり違った景色になりました。

抵抗やコンデンサー、他の部品、そして電線も交換し、だいぶ様子が変わりました。

 

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マジックアイの動作写真です。

この状態は「放送局を受信し始めていますが、まだピークではない状態」です。

ネットで見慣れた「アイ」と違いますでしょ?

 

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そしてこの状態は「NHK第一」でしたが、「同調がバッチリ合った!」状態です。

2つの山が寄り添ったり、離れたりするイメージのアイです。

ナショナルの基本設計として・・・ラジオの「ワイド(いわゆるHi-Fi)」時には・・

「動作しません。」 そのような回路設計になっています。

私の場合は、それに加えて「とにかく必要な時にONにして」「不必要な時にOFFに」

出来るように、シャーシの裏側に「マジックアイON-OFFスイッチ」を着けました。

これにより入手が難しいマジックアイの寿命を少しでも温存できるものと思います。

なお、単に高圧だけを入り切りするのではなく、ヒーター電源も同時に入り切りして

いますので、ONにしてもすぐには点灯しません。他の真空管同様10〜20秒掛かり

ます。(ヒーターは電球のフィラメントと同じと考えると、常時通電は早めに劣化

させることになります。)

 

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回路図がきれいな状態で中の壁に貼られていました。

かなりの部分の変更、追加回路、コメントがありますので最新の情報を加味した回路図

は実物に添えて発送したします。

 

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黒いネットエリア内が全て「音場:おんば」の大型ラジオです。

高さと奥行きはほぼ同じ30cm付近の寸法です。

写真は「PH」レンジです。

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裏蓋は「反り」も「割れ」も汚れも有りません。

Bluetooth受信機が差し込めるように、一部をカット加工しています。

 

大きいけれどスッキリとしたデザインと色、そして何よりも【音が良く】、

強力に聞こえる放送局から流れてくる音楽や語り・・・そしてBluetooth受信機を介し

スマホから流す音楽が、アナログ化されて程よい高音、低音が楽しめました。

 

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余談:

これは驚きました!

調整中に音が途切れるので、真空管を抜き差しして原因を探ろうとしたら・・・

音を作り出す大事な球(6BQ5)が、根元部分から「パリン!」と音がして、割れて

しまいました!😱💦  初めての体験でした!

これでは「真空」「管」ではなくなり、動作しないわけです。

手持ちがなかったので、すぐにヤフオクで探し出し新しいものに交換することで無事に

レストアを完了できました。

なお、この真空管が届くまでの数日間、音の比較もできるのでシャーシ上に7極の

真空管ソケットを設け、6AR5でラジオ全体の調整をしました。

回路上、6BQ5と6AR5の両方を差し込むことは出来ませんのでそのソケットは・・・

【使用不可】としました。

肝心の音比べですが・・やはり音の迫力、伸び、利得の面で「6BQ5」が優秀でした。

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以上