ONKYO OS-195(8台目)レストア記録
【今回出品中の実物写真】
昭和35年(61年前)のラジオです。
もちろん無傷ではありませんが、汚れもシミも殆ど有りません。
裏蓋も材質が劣化することも無く綺麗です。
もちろん元気に受信するようにレストアしました。
このラジオは当時かなり売れた様で、オークションの出品件数では一番?と思えるほど
たくさん出品されています。かくいう私もすでに8台目のレストアラジオになります。
小型軽量のトランスレスラジオで、スッキリしたデザインと感度の良さ、そして音の
良さに定評があります。 8台レストアしてきましたが一つとして状態が同じ物は今の
ところ有りません。 筐体が割れていたり、歪んでいたり、裏蓋が劣化していて触ると
割れてしまうような物や、とにかく中身にホコリが溜まり、油が染みてとにかく汚い
物まで様々です。
そんな中で今回のラジオは、主だった傷も割れも無くパネル面へのホコリの蓄積が
殆どありませんでした。(通常は熱溶着の透明カバーを外すのに汗掻いてました💦)
(レストア前のシャーシの内容)
ご覧のようにホコリもシミも有りません。
「筒状のコンデンサー(主にペーパーコン)」は、既に寿命が来ているか、あるいは
近いうちに絶える不安があるので無条件で新しく、さらに高耐圧のコンデンサーと交換
します。
右側の大きな「ブロックコンデンサー」も取り外し、新しく高耐圧な個別の電解コンデ
ンサーと交換し、電源フィルターとして基板に回路を組み込みます。
【レストア前】
これが「電源平滑回路」です。
回路図の段数よりもCRを多く構成していますので、ハムをより一層小さく出来ます。
しかも電源の真空管と近いため、微弱な信号を扱う真空管回路中に「高圧」を張り巡ら
す事による悪影響を避けることが出来ます。
下の写真の茶色い四角な部品は、扱っている電圧の4倍以上の電圧に耐えられるコンデ
ンサーです。場所塞ぎの大きな抵抗器も、現在の小型で同W数の抵抗に代えました。
【レストア後】
古いラジオにありがちな、ロータリースイッチのベアリングの錆による「玉落ち」を
避けるために「グリース」を塗布しました。
CRC-556 などは瞬間は効きますが、他の部分に染み込み「悪さ」をすることが多い為
長期に渡って使用できるグリースにしました。(ダイヤルの滑車にも使用)
【問題発見!】
■全て受信できているのですが・・・SW(短波)に切り替えた時に、受信感度が悪く
なったり、良くなったり・・切り替えスイッチをSW側に【強く】ひねると確実に
良くなるのです。(接触不良に他なりません。)
これはもう分解して、接点の汚れや接点電極の「バネ要素確認」が必要です。
そこで、今の配線状態をスケッチして、さらにバラした後に分からなくならない様に
ウエファに「白ペイント」を塗布し、ひと目で分かるようにしておきます。
分解したところ・・・組み上がっている状態からは見えない個所の「酸化、硫化」など
の被膜ができていました。
また、バネの力で接触を保つ4回路分の接点バネが多少「平たく」なっていました。
これでは接触力が小さくなるはずです。
そこで、サンハヤト社製の「接点ブライト」という薬品を電極部に塗って、約1分待ち
綿棒で拭き取り、その後は台所の中性洗剤でブラッシング!
油脂分もきれいに取れました。
組み立てたら、各回路の接点が正常かどうか「導通試験」をします。
無事すべての接点が確実に接触しています。(導通性オイル塗布)
配線をし、電源を投入し・・・SW、MW、PHと全てのバンドを何度も切り替えて、
感度の変化が無いことを確認しました。
(音が出ないとか、発振などの不具合がない限りここまで分解して清掃する方は
少ないと思います。しかし、短波、中波と言うように切替部分が多い機種は
早晩「接触不良が原因の不具合」が生じるかも知れません。)
*過去のオーナーさんが「MW」しか聴かない方だったりすると、他のバンドへの
切り替えがないため、尚の事「接触不良」が生じやすいと言えます。
手を加える必要のある別の箇所へ移ります。
パイロットランプ(電球)のソケットを絶縁テープで巻いています。
ONKYO社の設計が悪く、熱遮蔽板(裏蓋に装着されている金属板)が電球ソケットの
電極に触りショートする危険があるのです。
(電球は6.3V)の球ですが、電極にはAC100Vが加わっているので危険です。)
「イヤホンジャック」が装着されていた部分は、「イヤホン」を廃止して、同じ径の
「ステレオミニジャック」に代え、オーディオ入力にしました。
このラジオは「トランスレスラジオ」ですので、無思慮に配線すると金属部に100Vが
加わるため「感電」する恐れがあります。
そこで当機は・・・
信号側とアース側にオーディオ信号を通しながら、高圧が遮断されるコンデンサーを
それぞれ介して接続しています。これで「わざと」ラジオのシャーシや金属部を触らな
い限り感電はしません(^^)
小さなラジオ、そして小径なスピーカーを使用したラジオは、「シャリシャリ」また
は「チリチリ」と言うような音質がほとんどです。
そこで少しでもマイルドにしたり、乾いた音にしたい気持ちを満たせるように、当時の
高級機にしか無かった「TONE:トーン」切り替えスイッチを背部に設けまし
た。
これはラジオの時も、オーディオ外部入力の時も利用できます。
回路図がきれいな状態で貼られています。
でも実際は回路図と配線内容が違っていたり(メーカーの側にて)、性能アップの為に
私が「削除」したり「部品追加」したりと、実物と回路図とは少し異なっています。
そこで、ご落札頂いた際に「最新回路図」を品物に添付させて頂きます。
MW:中波もSW:短波も、とても感度良く受信しています。
電源平滑回路の段数増加と、配線の引き回し改良などにより「ハム:ぶ〜ん音」は殆ど
有りません。
すべての真空管ラジオに言えることですが・・・
高熱を発生する真空管ラジオは「つけっぱなし」で聴く、機器ではありません。
末永くお聴きになられるためにも、可能ならば一日「数時間程度」ご使用になることを
お勧め致します。
また、置き場所も「本棚の狭いスペース」に置いたり、壁や襖などにラジオの背面が
ピッタリと密着するような場所は避けてください。
排熱が出来なくなり、最悪「火災」の原因になるかも知れません。
トランジスターやICによるラジオと比較すると「劣る要素」が多い真空管ラジオなの
ですが、古き良き時代に活躍し今また再び時を経た「高性能な現代の電波」を、気持ち
良くシッカリとつかみ、独特の暖かな音で耳を癒やしてくれる「真空管ラジオ」をぜひ
愛しく思いながらお樂しみ頂けましたら、ラジオ本人も、レストアした私も嬉しく思い
ます(^^)